昨年、真冬の群馬県中之条町にて
「UFO食堂」と言う35ミリ短編の撮影を手伝わせてもらった山口智監督。
彼はわたしが以前通っていた映画学校の少し後輩に当たるのだが、
こつこつと自主制作で映画を撮り続け、とうとう待望の商業映画デビュー。
見事、この10月24日にユーロスペースにて公開を果たした。

映画のタイトルは「代行のススメ」。

主人公は、産休に入る先生の代わりを勤める小学校の代用教員、カヨ。
仲良くなれたと思った生徒達との関係も、出産明けに元の先生がもどれば、
一瞬で吹き飛んでしまう虚しさ。

プライベートでも、夫とは離婚届けを交し合う状態。
「この人は、私の代わりだっていってたよね。」と
面と向かって夫の元彼女(現恋人)に言われる始末。

そんなカヨが実家に帰れば、両親の家業は「代行」業。
酔っ払った人の代わりに車を運転して帰宅する仕事だ。

いい加減、「誰かの代わり」がいやになったカヨだが、
不器用で無口な父を支えていた働き者の母が、病気で倒れ、
母の代わりに父の仕事を手伝う羽目になる。

そんなカヨは、果たして誰の代わりでもない、
自分の新しい生きかたを見つけられるのか・・・?


全編に渡って、監督の山口君の人に暖かい眼差しが行き渡り、
役者さんの演技の捉え方やカメラワークも、前と比べずっとのびのびと、
そしてどっしりとして来た気がする。
前作「ufo食堂」に比べてあらゆる面で、彼の進化に「おっ」と思わされた。


そして多分、出演者が山口君を信頼し、安心して演じることが出来たからだろう。

主人公、カヨを演じる藤真美穂が、とてもいい。
抑制された表情の中に、微妙なニュアンスを感じさせて、複雑なカヨの心情を見事に表していた。

また、この作品を最後になくなった父親役の山田辰夫と母役の円城寺あやの渋い演技、
離婚して娘と別々に暮らす若い父親を演じる矢柴俊博や、夫役の山中崇、
自由奔放なカヨの女友達など脇を固める役者達がとてもいい。

途中、かよと家族、かよと恋人、父と母、従業員の父とその娘とかよ、
など複数の伏線的なエピソードが平行に進行するのだが、
それぞれの伏線の絡まり方がゆる過ぎると感じる部分もあり、
ストーリーの焦点がややぼやけたように感じた時もあったが、
全体を通して、見終わった後のすがすがしさに気持ちの良い後味を持って帰らせてもらった。

おススメします!


「代行のススメ」hp
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